緑のブログ
植物のちから
みなさんは、植物のちからをご存じですか?
植物は、切られたり台風によって傷ついても、光合成をおこなうことで修復することができます。
(このように周りから巻いていき塞がります)
ただし、傷を治すには、とてもおおきなエネルギーを必要としますので、光合成する葉っぱが少ないと、どんどん弱ってしまいます。
そのために、日尚園では出来るだけ早く傷が修復しやすい方法で剪定をおこなっています。
そこで今回は、「樹木の防御機構を活かした剪定方法」をご紹介します。
人間でも、切れ味の良い手術メスとガタガタのメスで手術を受けた場合に、傷の治りの速さに違いがあるように、植物でもガタガタの刃物や刃先にばい菌がくっついたりしていると、菌が感染したり傷口の修復速度に影響がでます。まずは、よく手入れされた清潔なのこぎりやハサミを使うことを心がけましょう。
そして、清潔なハサミ及びのこぎりを準備できたら、次は実際の剪定の位置や角度が重要になってきます。
以下の図は、造園・植木屋さんの世界を経験した人には、一度は目にした事があると思います。
※実はここが一番大切なポイントで、このあと傷口にどんなに高価な薬(殺菌剤や癒合剤などの塗布剤)を塗ったとしても、切り方がずさんだとやはり修復過程に深刻な影響をおよぼします。
( 樹木の防御機構を活かした剪定方法 )
(絵でわかる樹木の育て方 P、79 図5.32)
この図は、どうしても剪定が必要な場合は、
せめてAの位置で正しく剪定すると、その後の傷口が比較的早く修復することを伝えています。
経験上、人の視覚的に幹とまっすぐ直線的に切ったほうが綺麗にみえてしまうのか、
Cの位置で切断されている樹木を多く見ます。
しかし、じつはここに樹木が弱ってしまう落とし穴が潜んでます。
下の図をご覧ください。
( 枝下部のふくらみの内部の構造 )
(絵でわかる樹木の育て方 P、65 図5.2)
この図は、枝の下部の内部を描いていますが、このふくらみが幹と枝のエネルギーの通り道であることを示しています。
(枝下部のふくらみの内部の構造の詳細 )
(絵でわかる樹木の育て方 P、65 図5.1)
一番目の図のCの位置で幹に沿った位置で切ると、樹木にとって大切な養分の通り道を傷つけてしまうことが、このことからわかるとおもいます。
以下、写真で解説します。
まずは、Cの位置で切った場合を見ていきましょう。
Cの位置での枝切除:イチョウ
Cの位置での枝切除:モミジ
(絵でわかる樹木の育て方 P、80 図5.35)
Cの位置では、幹上部から輸送される養分減少により修復細胞の発達を望めないことから、切り口の上部及び下部に腐朽が進行してしまいます。
次にBの位置で切った場合をみていきましょう。
Bの位置で切った場合:ヤマモモ
惜しい位置剪定:モミジ(1)
惜しい位置剪定:モミジ(2)
写真ヤマモモの切り口は、
中途半端にのこってしまった枝を巻き込むことが出来ないまま切り口表面が乾燥し亀裂が生じて、枝元ふくらみ内部にも乾燥と菌の侵入による細胞の抵抗~収縮がみられます。
写真モミジ(1)は、正しい剪定位置よりも、ほんのすこしだけ外側に飛び出ています。惜しい…。この例も中途半端な残り部分を修復細胞が巻き込みしづらい状況をつくりだしています。
写真モミジ(2)は、焦って剪定したのでしょうか、せっかく切り口に癒合剤を塗っていますが、その切り口下部にほんの少しだけ皮がめくれてしまっています。惜しい…。写真をとった時は雨が降っていましたので、この傷口から菌がついてしまうのでしょう。
このような場合、以下の写真のようになります。
(上の写真を図で表現した場合)
(絵でわかる樹木の育て方 P、80 図5.34)
結果として、中途半端な位置での剪定は、幹に空洞を作り出す原因を生みます。
最後に、Aの位置で切った場合を見ていきましょう。
この場合、幹の上部から光合成でつくられたエネルギーをおくってもらえるので傷は周囲から修復します。
切り口面の周囲から癒合細胞が発達する様子:モッコク
葉っぱのついている時期(光合成ができる時期)により剪定時期も樹種によって異なりますが、
この剪定の位置はスギ・ヒノキなどの針葉樹をのぞいて共通していますので、しっかり身に着けて、そのあとの切り口に対する処置へと繋げていきましょう。
※幹及び枝の内部組織の図説は、すべて
絵でわかる樹木の育て方からの引用です。
出典:堀 大才 絵でわかる樹木の育て方(2015)
切り口に、どんな殺菌剤や癒合剤をぬったら効果があるのかは、
今度、ルータソに紹介してもらいます。
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